大逆事件 教育委員が標柱提案
38年前のラジオ番組聴く
-顕彰する会/和歌山
大逆事件(1910年)で処刑された新宮市出身の医師、大石誠之助(1867~1911)を名誉市民にする運動を進める「『大逆事件』の犠牲者を顕彰する会」は24日夜、大石を取り上げたNHKラジオ番組を聴く「ふるさとの心を語るゆうべ」を、同市の井の沢隣保館で開いた。会場を埋めた約70人が静かに聴き入った。
番組は1972年夏に放送された「ふるさとの心」シリーズの一つ。元同市教育委員で郷土史家の浜畑栄造さん(1895~1983)らが、語り手の進行に沿い証言する形の番組で約25分。大石の人物像、事件前後の新宮を浮き彫りにしている。収録したテープが三重県紀宝町で見つかった。
番組の中で浜畑さんは、「教育委員になった時、まず、郷里の先覚者として顕彰とまでは言わなかったけど、屋敷跡なども観光客が見にくるような状態じゃから標柱でも立てたろうじゃないか」と発言したと明かした。しかし「もってのほかじゃ」と議員に反対されたという。
語り手は「新宮の地を故郷とする佐藤春夫と大石誠之助。成功した者に温かく、失敗した者に冷たい。もし、故郷に心というものがあるならば、その心は大石誠之助のごとき郷里のために尽くし、人生に失敗した者をこそ温かく迎え入れるものでなくてはならない」と番組を締めくくった。
【神門稔】
毎日新聞 2010年1月26日 地方版