試写室/NHKスペシャル
日本人はなぜ戦争へと向かったか/NHKテレビ後9・0
破滅への道に加担、新聞・放送
太平洋戦争開戦70年シリーズで、今回問われるのは新聞・放送の戦争責任。日清・日露戦争勝利で高ぶる日本は1931年「満州事変」で15年戦争へと突き進む。このとき商業新聞は戦争の真相を伝える役割を放棄した。番組は、元記者らから聴き取った大量の証言テープで構成する。
発端となった満鉄爆破。関東軍の謀略の事実を知りながら、新聞は報道しなかった。むしろ戦火の拡大を部数拡大の好機とする。
大手新聞の発行部数を凌ぐ契約台数を持つラジオ(日本放送協会)も、戦争への「熱狂」を演出した。ナチスドイツの国民扇動方法を手本に前線中継や誇大戦果報道、軍・政府首脳の演説を中継する。つくられた「国民の熱狂」のもと、言論の自由は抹殺され、明治の「坂の上の雲」時代が生み育てた軍人たちによって太平洋戦争の破滅へと踏み出す。
国際連盟脱退の外交方針を支持する新聞132社の共同宣言。近衛首相はメディア代表40人を集め、協力を要請する。戦争遂行という「国益」で一色になっていく報道。これは現代にも通じる。メディアが厳しく自らに問い直す鏡とすべきだ。
(二葉 恵 ライター)
2011年02月27日 しんぶん「赤旗」