ストップ「集団的自衛権行使容認」③
「九条の会・わかやま」事務局・南本勲
安倍首相が容認を目指す「集団的自衛権の4類型」の問題点
すべて日米同盟強化のためのテーマ
集団的自衛権有識者懇談会は「4類型」に絞って「研究」をすることになっている。この「4類型」は、いずれも日米同盟強化のためのテーマとなっているもので、「わが国に対する武力攻撃」とは言えないものばかりである。それは米国側から「集団的自衛権の行使の制約が日米同盟の障害になっている」と、集団的自衛権行使の要求が強まり、その要求に応えて、「海外で米国と一緒になって武力行使をする前の段階で、憲法解釈に関する障害を取り除いていくこと」に目的があるからである。
そのために、まず、集団的自衛権の限定的な行使を可能にして、将来の全面的行使に道を開こうとするものである。
参議院の「自衛隊の海外出動は行わない」決議
集団的自衛権の核心は海外で戦争をすることである。国内で武力行使をする場合は、個別的自衛権の発動になるからである。
1954年、参議院が「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」を行っている。それは、「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の各章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照らし、海外出動は、これを行わないことを、茲に改めて確認する」と明快に述べている。憲法の精神を踏まえる限り、海外出動はありえない。これが素直な憲法解釈ではないだろうか。
どんな「小さな」集団的自衛権も行使できない
政府は従来から「集団的自衛権の行使は自衛のための必要最小限を超えるものであり、許されない」としている。ところが安倍首相は「『必要最小限』は『量的概念』であり、「自衛のための必要最小限の集団的自衛権の行使はありうる」と主張している。しかし、自衛権発動には3要件が必要であり、そのひとつである「わが国に対する急迫・不正の侵害がある」を満たしておらず、どんなに「小さな」「限定的な」集団的自衛権でも行使はできないのである。集団的自衛権は「量的概念」ではなく、「質的概念」である。内閣法制局も集団的自衛権は憲法に明文化しない限り無理だと言っている。
集団的自衛権懇談会の4類型とは①
(1)公海上で共同訓練などで行動をともにする米艦船への攻撃に対して自衛艦が応戦する
安倍首相は「共同訓練などで公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても、我が国自衛隊の艦船は何もできないという状況が生じてよいのか」と言う。(5月18日の有識者懇談会における冒頭発言)しかし、共同訓練中であっても、米艦船への攻撃は米国と第三国が交戦しているのであって、わが国が攻撃されているわけではない。従って、自衛隊が応戦するのは、海外における武力行使となり、明らかに集団的自衛権の行使となる。海外での武力行使を否認する憲法に違反する。そもそも、わざわざ戦闘があり得るような公海へ共同訓練に出かけない限り、世界第一の軍事力を持つ米艦船と太平洋第二の「海軍力」といわれる自衛艦に攻撃してくる事態は考えられないのである。これは、共同訓練などと、もっともらしい状況を設定して、集団的自衛権行使に道を開こうとするものだ。
2007年08月25日 「九条の会・わかやま」44号 (2)