大石誠之助を名誉市民に
大逆事件の犠牲者
和歌山県新宮市の「『大逆事件』の犠牲者を顕彰する会」(二河通夫会長、約200人)は20日、「紀州(新宮)グループ」(6人)の一人で、非戦や人権活動の先駆者といわれる大石誠之助(1867~1911)を名誉市民にするよう、田岡実千年市長と奥田勲議長に要望書を手渡した。来年の大逆事件発生100周年に向けた取り組み。顕彰する会は「近代の新宮の文化的土壌の基礎をつくった。人柄や功績を後世に語り伝えるべきだ」と話している。
大石は、大逆事件の犠牲者の一人。医師で、文化人、クリスチャンでもあり、新宮市出身の建築家西村伊作(1884~1963)のおじにあたる。
顕彰する会は、名誉市民になっている西村のほか、作家の佐藤春夫、天文学者の畑中武夫、作家の中上健次らが大石の思想に影響を受けたことを強調し、新宮市への功績が大きいことを訴えている。
この日は二河会長ら会員8人が市役所を訪れ、「功績を調べた上で、大逆事件100周年の節目に名誉市民にしてもらいたい。全国的に関心が高く、市にとって有益」と田岡市長に要望書を手渡した。田岡市長は「教育委員会と相談した上で、どうするかを考えたい」と答えた。
新宮市では、議会が2001年9月、大逆事件は冤罪(えんざい)だったとして、紀州グループ6人の名誉回復と顕彰を宣言する決議案を可決している。
顕彰する会は、市立図書館長だった二河会長ら市民有志の呼び掛けで01年8月に設立。市議会に名誉回復の決議を働き掛けるとともに、周知のためのシンポジウムや研究会の開催、研究誌やパンフレットの発行などをしている。全国の犠牲者の追悼も続け、市役所近くの春日公園内に顕彰碑を建立した。
名誉市民は、市政の振興や社会福祉の向上、産業の振興、学術・文化・スポーツの振興に貢献した人に贈る称号。市長が議会の同意を得て決定する。現在まで10人で、第一号は佐藤春夫。
大逆事件 1910年、明治天皇の暗殺を計画したとして、高知県四万十市出身の幸徳秋水ら社会主義者や無政府主義者が弾圧された事件。紀州グループ6人のうち、大石と成石平四郎(田辺市本宮町請川)の2人は死刑、残りの4人は無期懲役になった。
紀伊民報 AGARA (2009年11月20日更新)