「戦争と人道に反する罪に時効はない」
復刻版の発行にあたって
2005年11月、中央常任理事会は「戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適用に関する条約」(以後時効不適用条約と略)の国会承認と批准を求める署名運動を開始することを決定しました。
しかし「時効費適用条約」そのものについて、まだ一般に広く知られていないのが現状です。この条約について、学習するために、また広くご理解をいただくために、パンフレット「戦争犯罪と人道に反する罪に時効はない」復刻版を発行することとしました。
「時効不適用条約」は、一九六八年の国連第23回総会において、賛成五八、反対七、危険三六で成立し、一九七〇年一一月に批准国が必要数に達して発効し、国際法として確立されました。
日本は条約の提案に対しては棄権し、今日まで批准をおこなわないままになっています。
治維法国賠同盟では八一年の第一三回定期大会でこの条約の速やかな批准を求める特別決議を採択しています。それ以来、批准を求めるスローガンを掲げてきました。八七年一月中央幹事会で桑原英武副会長(当時・現名誉会長)が条約についての特別報告をおこない、その報告に加筆されたパンフレット「戦争犯罪と人道に反する罪に時効はない」が討議資料として発行されました。こうした取り組みがありながらも、条約について十分な運動化行われず、宣伝も広く行われてこなかったのが実際です。
同盟は、治安維持法犠牲者に対する国賠署名を、一九七四年から取り組んで、毎年国会請願を続けています。同盟の国賠要求運動は、天皇制権力が犯した戦争犯罪を追及し、治安維持放火で行われた人道に反する権力犯罪を告発し、犠牲者に謝罪を求め続けるたたかいです。
同盟の運動そのものが、まさに一九四五年までの、戦争犯罪と権力犯罪に時効の不適用を求めるものです。しかし、治安維持法についての政府見解は「当時必要な法律であった」という域を一歩も出ようとしていません。それだけに「時効不適用条約」そのものについて、批准を求める独自の取り組みを強めることが必要です。
こんにちあらためて「時効不適用条約」の署名運動を提起したのは、今日の情勢の特徴からです。
一つには、二〇〇五年九月に開かれた国連六〇周年記念首脳会議で採択した「成果文書」には、つぎの国連総会で人権理事会の設置を決めると明記されました。
国連では、これまで社会経済理事会のもとに置かれた人権小委員会で問題が扱われてきました。人権理事会設置は大きな発展です。
人権問題についての国際的関心の高まりがここに現れています。
いま一つには、小泉首相の靖国神社参拝と、戦争礼賛を子供に教え込もうとする教科書問題に象徴的に現れているように、過去の侵略戦争を正当化しようとする逆流が、この数年来顕著です。
この逆流とたたかうためにも、戦争犯罪を問い、侵略の加害を考え、権力犯罪を追及する声を大きくしなければなりません。このたたかいのなかで、「時効不適用条約」の批准を求める運動は、この条約の存在を広く知らせながら、大きな力を発揮するでしょう。
これまで同盟は、他の戦後補償の問題との連帯や共闘は、十分なものとはいえませんでした。「時効不適用条約」批准を求めるうんどうでは、日本軍慰安婦、強制連行、強制労働、シベリア抑留など、さまざまな問題の取り組みとも連帯を強めることができると確信しています。
「せんそうはんざいと人道に反する罪に対する時効不適用に関する条約」の批准を求める運動へのご協力をよろしくお願いいたします。
二〇〇六年 新春
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟 大阪府本部
パンフレット 「なぜ、いま 時効不適用条約か」
「戦争犯罪と人道に反する罪に時効はない」 から