九条噺
居酒屋「ワタミ」社長・渡辺美樹氏が朝日新聞に憲法について「改正恐れず『完全型』に」と書いている▼氏は「自衛のための武力を所有しているのが実態であり、現状は条文と実態が異なっている。こうした現実とのずれを解釈改憲で埋めてきたために、『拡大解釈』とか『解釈の相違』などという問題が起きている」「実態に合わせてどんどん改正し、常に完全な形であるべきだ」という▼9条には「戦力は保持しない」と規定されているのに、無理やり自衛隊を作り、「現実に自衛隊があるのに、それを明文化しない憲法はおかしい」と言っている。違法状態を作っておいて、法律を違法状態に合わせろという論法である。憲法前文は「日本国民は・・この崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」といっている。違法の追認ではなく、適法の追求こそ我々の進む道である▼氏はまた「『自衛のため以外に軍隊が発動することはない』と憲法に明記すれば戦争はできない」という。かつて日本も一九二八年にパリ不戦条約に署名しておきながら、満州事変から太平洋戦争にいたるまで、「自衛」の名の下に侵略戦争を行ってきた。米国のベトナム戦争や旧ソ連のチェコスロバキア侵攻なども集団的自衛権の名の下に行われた。「自衛」という名目がいかにいい加減なものかを思い知っているはずである▼「憲法で歯止めをかければ大丈夫」というのは権力が信頼できるという前提である。現状の憲法も守れない権力を信頼する訳にはいかないのである。(南)
2007・10・15 「九条の会・わかやま」49号(1)